皆さんが既に介護現場で働いているなら、利用者が、夕方になると「家に帰ります」とか、一日中「家に
帰りたい」とか言われているのを耳にした方も少なくないでしょう。
　そのような訴えは帰宅願望と呼ばれ、介護職も最も対応が難しい症状の一つとも言えますが、多くの職員
は戸惑い、困り、「もうすぐご飯ですから」とか「もう遅いですから今晩は泊まっていきませんか」等、そ
の場限りの対応をせざるを得なくなるのです。
　脳科学者の恩藏絢子さんの著書で「なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか」という、まさにドンピシャ
の本がありますので、興味があれば一度手に取ってみてください。
　認知症の人が「家に帰りたい」というのは、文字通り字面を捉えるのではなく、絶えず不安と混乱に苛ま
れている当事者が、「少しでも自分が安心できる場所」を求めて思わず口から出る心の叫びです。正解はこ
れというものはありませんが、その心を理解し、寄り添うことが大切です。